|
旧地獄温泉街。
|
|
陰鬱な地底世界随一の歓楽街である。
|
|
ここには善悪の判断はなく、ただ高温の熱水に身を委ね
怠惰の極致に至る地獄の極楽であった。
|
|
小傘 「……ええ、地の底にそんな秘密があるなんて
おどろきー!」
|
|
女苑 「そうなのよ。
世界遺産ものの驚きなのよ。
これは見に行きたいでしょ?」
|
|
小傘 「ええ?
でもー、危険なんでしょ?」
|
|
紫苑 「もちろん危険です。
旧灼熱地獄を通過しなければいけないし、
旧血の池地獄も憎悪の念で燃えさかっています」
|
|
小傘 「わあ、見てみたいけど難しそうね」
|
|
女苑 「でーすーが!
私達の『血の池ツアー』の安全は保証します!
依神ツーリストは、私達の完全サポート付きです」
|
|
小傘 「ええー、どうしようかなー」
|
|
紫苑 「今なら、お安くしておきますよ……」
|
|
饕餮 「なるほど、お前らの仕業だったか」
|
|
饕餮 「旧血の池地獄の事を言いふらすとは
どういう考えがあっての事か」
|
|
紫苑 「離してよ!
私達は石油を当てにして使ったツケを
返さないといけないんだから!」
|
|
女苑 「怖い物見たさって奴?
危険な場所に行くツアーって、高額でも人気なのよねー」
|
|
女苑 「みんな馬鹿なのよ。
金払ってまで危険な目に遭いたいなんて」
|
|
紫苑 「旧血の池地獄に落ちた後なんてどうなっちゃうか
判らないけど、前払いだから問題ないしねー」
|
|
女苑 「自己責任、自己責任。
騙されるのも自己責任。
自己責任って、素敵な言葉よねー!」
|
|
饕餮 「お前ら……。なんか凄いな」
|
|
饕餮 「剛欲同盟が引くぐらいの強欲さだ。
もしかして、お前ら、大物に……」
|
|
隠岐奈「流石、疫病神と貧乏神と言うところでしょうか」
|
|
隠岐奈「でも、こいつらに関わるのはよしましょう
関わる者全てに不幸と貧困をもたらす、最悪の神です」
|
|
隠岐奈「今回の『血の池ツアー』の事は
見てみなかったことにしましょうか」
|
|
饕餮は頷いた。
|
|
それは依神姉妹に関わるな、という忠告に対してだけではなかった。
|
|
隠岐奈に対しての信頼を取り戻し、
もう一度旧血の池地獄を二人で管理しようという承諾だった。
|
|
隠岐奈と饕餮は、お腹と背中を通じた戦いの中で奇妙な信頼関係を築いていた。
|
|
旧血の池地獄は再び地の底に封じ込まれ、地上では忘れ去られていくだろう。
|
|
……え? その後、血の池ツアーの事はどうなったかって?
依神姉妹のする事は、関わるだけ損である。
|
|
彼女達の事は幻想郷の何でも屋、博麗霊夢に任せることにしよう。
|
|
きっと、良い感じに収束するに違いない。
|
|
だって今までも、ずうっとそうだったのだから。
|